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前立腺がんは患者数が急増している癌です。早期発見のために前立腺がんの原因、症状、検査、治療を知っておきましょう!

前立腺がんのホルモン療法
知っておくべき7つのポイント

目次


前立腺がんに関係する男性ホルモンとは


 男性ホルモンは大きく分けると、男性ホルモン全体の95%を占める精巣(睾丸)でつくられるテストステロンと、残り5%の副腎でつくられるアンドロゲンの2種類があります。

 これらの男性ホルモンは脳の視床下部と下垂体と呼ばれる2つの器官でコントロールされています。

 血液中のテストステロンの量が低下した場合、視床下部から下垂体にLH−RH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)が分泌され、その刺激を受けた下垂体はLH(黄体形成ホルモン)を分泌し、精巣からテストステロンを分泌させます。

 また、視床下部はCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)を分泌し、その刺激を受けた下垂体はACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を分泌します。このACTHが副腎に作用し、副腎からアンドロゲンを放出させます。

 アンドロゲンは男性ホルモン全体の5%にすぎませんが、加齢とともにその影響力が大きくなるほか、前立腺内でDHT(デハイドロテストステロン)と呼ばれる強いホルモンに変わるため、前立腺がんのホルモン治療ではテストステロンとアンドロゲンの両方に対応しなければなりません。



ホルモン療法とは


 ホルモン療法は内分泌療法とも呼ばれ、体内のホルモン分泌を抑制したり、ホルモンの効果を抑えたり、拮抗する働きのホルモンを投与したりする治療法です。

 前立腺がんの多くはアンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンの影響を受けており、男性ホルモンが多いほどより増殖する傾向にあります。逆に、男性ホルモンの働きが抑えられると、前立腺がんの細胞は増殖をやめたり、死滅したりします。

 このようなホルモンの影響を受ける前立腺がんを「ホルモン依存性」と呼びます。つまり、ホルモン療法は前立腺がんを増殖させる男性ホルモンの働きを抑えることを目的としています。

 ただし、ホルモン療法だけで根治させることは難しく、根治を目的とした手術を行うまでの間、癌細胞の増殖を抑える目的で行ったりします。ホルモン療法には以下のような治療法があります。

LH-RHアナログ療法

GnRH受容体アンタゴニスト療法

LH-RHアナログ+抗アンドロゲン剤併用

LH-RHアナログ療法とは


 男性ホルモンの働きを抑える最も効果的は方法は、下垂体からのLH(黄体形成ホルモン)の分泌を抑制し、精巣からのテストステロンの放出を抑えることです。

 LH−RHアナログ療法とは、LH−RHの働きに類似した薬剤を投与して下垂体を継続的に刺激し、下垂体からLHを放出させ続けることでLHを枯渇させ、テストステロンの放出を抑える働きがあります。

 現在、LH−RHアナログ療法によく使われている薬は、リュープリンとゾラデックスの2種類があります。治療当初は下垂体にLHが存在するため、下垂体を刺激することで大量にテストステロンが放出されるフレアアップと呼ばれる現象が4日間程度続きます。

 フレアアップ現象が起こると、大量のテストステロンの影響で発汗やのぼせ、ほてり、排尿障害などが起こることがあります。このような症状を防ぐため、LH−RHアナログ療法を始める前に抗アンドロゲン剤を投与しておく必要があります

 ホルモン療法は副作用が起きやすく、男性ホルモンの働きを抑制することで、性欲減退やEDのほか、筋力低下や肥満、糖尿病が起こることが知られています。なお、性欲減退やEDはLH−RHアナログ療法を中止することで回復することがわかっています。

GnRH受容体アンタゴニスト療法とは


 GnRHはゴナドトロピン放出ホルモンの略で、アンタゴニストは阻害剤の事を言います。視床下部ではGnRHがつくられており、下垂体にあるGnRH受容体に結びつくことでテストステロンが産生されます。

 このGnRH受容体アンタゴニストは、GnRHが下垂体のGnRH受容体に結びつくのを阻害し、テストステロンの産生を抑える働きがあります。LH−RHアナログ療法のようにホルモンの異常分泌がないため、投与後にホットフラッシュのような副作用が起きる事はありません。

 このGnRH受容体アンタゴニストには「デガレリクス」という薬剤があり、皮下注射で投与します。

 デガレリクスは投与3日目から効果を発揮し、安定してテストステロンを抑える働きがありますが、LH−RHアナログ療法に比べて注射薬の量が多い、毎月注射しなければならないなどの患者負担があります。

LH-RHアナログ+抗アンドロゲン剤併用とは


 男性ホルモンには精巣でつくられるテストステロンと、副腎でつくられるアンドロゲンがあり、LH−RHアナログ療法ではテストステロンの分泌を抑えることができますが、副腎アンドロゲンを抑えることはできません。

 50歳以上になると、テストステロンよりも副腎アンドロゲンの働きが強くなるため、抗アンドロゲン剤で副腎アンドロゲンを抑える必要があります。

 この抗アンドロゲン剤はアンドロゲンの分泌を抑えるのではなく、前立腺がんの細胞にあるアンドロゲン受容体に結びつき、アンドロゲンと癌細胞の受容体が結びつくのを抑える働きがあります。

 抗アンドロゲン剤には「ステロイド剤」と「非ステロイド剤」の2種類があり、それぞれ効果が異なります。ステロイド剤は副腎アンドロゲンの働きを抑えるだけでなく、視床下部に働いてテストステロンの分泌を抑制するため、性機能障害や女性化乳房などの副作用が起きる事があります。ステロイド剤には酢酸クロルマジノンがあります。

 一方、非ステロイド剤は男性ホルモンの分泌を抑える働きがないため、ステロイド剤のような性機能障害は起きにくいのですが、女性化乳房と肝機能障害の副作用が起こることがあります。

 そのため、非ステロイド剤を服用する際には定期的な肝機能検査を受ける必要があります。非ステロイド剤にはフルタミドとビカルタミドがあります。

 抗アンドロゲン剤は単体で投与しても効果が期待できず、LH−RHアナログと併用するMAB(最大限アンドロゲン遮断)療法で使用されます。MAB療法は一般的にホルモン療法の中で最も選択される治療法で、他のホルモン療法に比べて効果があるとされています。

ホルモン療法の注意点


 ホルモン療法で注意しなければならないことは、ホルモン療法は前立腺がんの進行を遅らせる治療であり、根治を期待する治療ではないという事です。

 そして、ホルモン療法は体内で本来必要なホルモンの働きを抑えるため、性欲減退や女性化乳房、排尿障害、ED、筋力低下、骨粗しょう症、肝機能障害など、少なからず副作用を伴います。

 さらに、ホルモン療法の治療費は非常に高額であり、経済的負担も無視できない問題となります。前立腺がんの治療法は多岐にわたるため、癌の進行度や患者の年齢を考慮し、治療法を慎重に選ぶ必要があります。少なくとも、長期間にわたるホルモン療法は受けるべきではありません。

精巣除去手術とは


 精巣除去手術とはその名の通り、両側の精巣(睾丸)を摘出し、精巣から分泌される男性ホルモン(テストステロン)をなくす治療法です。ホルモン療法がない時代はこの治療法しかありませんでしたが、現在はホルモン療法が同じ効果を発揮するため、あまり行われなくなりました。

 手術自体も30分程度で終了し、3〜10日の入院で済みます。手術後1〜2週間程度で血液中の男性ホルモンが急激に減少し、効果を発揮するようになります。精巣除去手術はホルモン剤を使用しないため、経済的負担は少ない治療法ですが、ホルモン療法と同様に性欲減退やEDなどの副作用を伴います。




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